Madenokoujiのブログ

老化防止を目的に、「”ニュース”+”私見”」或いは「暮らしの話題」を投稿します(「Google AdSense」を利用しています )

※ 当ブログはアフィリエイト広告を利用しています

40年間ツバメの成長見守る夫婦🧑‍🤝‍🧑

春から夏にかけ、各地で見られるツバメ。古くから縁起の良い鳥として、人と自然が共に生きる「幸せの象徴」になってきた。そんなツバメの成長を40年間見守る夫婦が、奈良県宇陀市にいる。日本の原風景が残る自然豊かな場所で、ツバメと人々が織りなす営みを1年にわたり見つめた。

 

■ツバメと共に暮らす夫婦の思い

奈良県宇陀市、大宇陀地区。自然豊かなこの地に建つある家に、南の国で冬を過ごしたツバメが毎年やって来る。この家に住むのは、2人暮らしの西谷さん夫婦だ。夫・重信さん(76)と妻・真知子さん(73)は、40年もの間、自宅の納屋に巣を作るツバメたちを見守ってきた。

「ツバメは、ほんまに仲良いからね。見とったら、ほほえましいよ」(重信さん)

「ホッとするよ、気持ち的に」(真知子さん)

「ウワーッて、じゃれあってね」(重信さん)

ツバメが巣を作る納屋の床には、新聞紙を敷いた大きな箱がたくさん並ぶ。

「おしめ替えるのと一緒」(真知子さん)

それはヒナの糞を受ける箱だ。真知子さんは笑いながら、ヒナたちの「おしめ」をテキパキと替える。

「3月終わりぐらいかな。卵がかえりだしたら忙しい。どっさり出るし、山盛り」(真知子さん)

「巣は42個あります、今」(重信さん)

「『今年は、この子は初めてやな』とか、だんだんわかるようになってきて。初めての子は、子どもの数が少ないです。新しい家を作ったりしてるし。3羽ぐらいしか、卵をかえせないからね」(真知子さん)

ツバメは、落ちている泥や草を拾って、巣を作る。人の住む場所に巣を作るのは、カラスやヘビなどの敵から身を守るためだともいわれている。子育ては夫婦で協力して行い、交代で田んぼや河原へ虫を捕まえに行く。そして、何回も何回も、親の手を離れるまで、ヒナのもとへエサを運ぶ。

しかし、全てのヒナが無事には育たない。

「最近ですけど、ツバメの巣から、ヘビの頭だけ出てました。そのヘビを捕まえたら、お腹がボコッボコッボコッとなってて…みんな、のまれてるねん、かわいそうに」(重信さん)

納屋でも、真知子さんが床に落ちた何かをティッシュで拾い上げ、そっと包んだ。

「これで、今年4匹目やね。かわいそうやけど」(真知子さん)

それは、落ちて死んでしまったヒナだ。真知子さんは、少し傾斜になった庭の一角の土を深く掘り、ヒナの亡骸を埋めてあげる。青い空がよく見える、「ツバメ」と書かれた小さなお墓。真知子さんは埋葬し終えると、静かに手を合わせる。

「ここに埋めたのは、また空が見えるかなと思って。ツバメがね」(真知子さん)

西谷さん夫婦が出会ったのは、50年前。大阪に住んでいた真知子さんが重信さんのもとに嫁ぎ、2人の子どもに恵まれた。40年前に納屋を建てたときに初めてツバメが訪れ、それ以来、毎年3月の彼岸の頃に必ずやって来るようになった。

「お金よりも、作る楽しみ・育てる楽しみを持ちながら、これから何年かわからんけど、ぼちぼち頑張りますわ」(重信さん)

重信さんは何十年にもわたり日記をつけていて、その中にツバメのことも細かく書いている。

「『来る』のか『帰る』のかわからんけど、『ツバメ帰る』って書いてます」(重信さん)

 

■夏になると、ツバメは旅立っていく

西谷さん夫婦が住む地区にある、奈良県立大宇陀高校。多くのツバメが巣を作るこの高校は、大正時代に建てられ、創立100周年だ。しかし、隣の学校との統合で閉校が決まり、校舎は新しい高校として使われることになった。3年生16人が、この高校の最後の生徒になる。ツバメは、この学校のシンボルだった。

西谷さん夫婦にとっては、夏が別れの季節だ。西谷さん夫婦の家でも、ヒナのいる巣の周りを大人のツバメたちが活発に飛び回る。

「体の小さい子がいてますねん」(真知子さん)

「弱いから、よう外に出られない。そしたら、親だけじゃなくて、周囲の鳥がいっぱい寄ってきます」(重信さん)

「飛び方を教えに」(真知子さん)

「あれは多分、『こうして飛ぶんや』と教えとるんやろうね。『はよ来い、はよ来い』って言うてんのかなー」(重信さん)

そして、8月。納屋は、すっかりキレイになった。西谷さん夫婦が、ツバメの為に用意した「おしめ」や網などを片付けている。

「出て行ったときは、ホッとするね。『元気に行ったわ』って。やれやれ…。やれやれやね。やれやれやけど、いなくなると、寂しい」(真知子さん)

ツバメは子育てが終わると、敵に襲われないよう、集団でねぐらを作る。空を覆いつくすような、ツバメの群れ。あまりの壮大さに、写真を撮る人もいる。7万羽ものツバメが奈良の平城宮跡に集まり、そして、南の国へと旅立つ。

 

■ツバメは幸せを運ぶ鳥…今年も、これからも

ツバメが旅立った大宇陀に、秋がやって来た。西谷さん夫婦が稲刈りをしている。

大宇陀高校の生徒たちは、新しい高校になってもツバメが戻ってくると信じて、巣のあった場所の床を掃除した。

冬を経て、大宇陀高校では、100年の歴史に幕を下ろす最後の卒業式が行われた。

「どれほど長く紡がれた歴史にも、必ず始まりがあり、必ず終わりがあります。旅立つ私たちを、どうか、温かく見守っていってください」(大宇陀高校 生徒会長・岩崎勝さん)

校舎の壁に物悲しく残る、ヒナのいないツバメの巣。校庭の桜の木は、蕾が膨らみ始めている。

ようやく、春が訪れた。大宇陀地区の山々には、桜が満開だ。重信さんが、納屋のシャッターを開けると…。今年も西谷さん夫婦のもとに、ツバメが帰って来た。

「遠い旅をして、無事に戻ってきたんやなと思ったら、かわいいですよ」(重信さん)

西谷さん夫婦には、楽しみにしていることが、もう一つある。毎年、温かくなると、娘の家族が友人を連れてやって来る。年を重ねるごとに集まる人が増えた。子どもたちに納屋のツバメを見せてあげ、庭でBBQを楽しむ。輪の中心にいる西谷さん夫婦は、弾けるような笑顔を見せる。

「場所は、提供するよ。何もできないけど」(重信さん)

「来てくれるほうが、うれしい」(真知子さん)

「ツバメも来て、皆さんにも来てもうて、幸せですわ。幸せ、それだけ」(重信さん)☺️